国家公務員の早期退職募集制度について
内閣官房のHPによると以下の説明がある(強調はFREEDIAによる)。
「早期退職募集制度について」(内閣官房HP)
https://www.cas.go.jp/jp/gaiyou/jimu/jinjikyoku/jinji_c3-1.html
職員の年齢別構成の適正化を通じた組織活力の維持等を目的として、透明性の確保された早期退職募集制度が創設され、平成25 年11 月1 日から本制度に基づく退職(応募認定退職)が可能となった。
各省各庁の長等がその都度勤続年数や職位といった応募条件を定めて定年前に退職する意思を有する職員の募集を行い、職員が応募後、各省各庁の長等に認定を受けて指定された日に退職した場合には、退職手当の額が自己都合退職した場合よりも割増しされるものである。
早期退職募集制度導入の経緯
知りたい方は少ないと思うが、調べてみた。
昭和60年の国家公務員定年制施行時から、早期退職のインセンティブはあった。定年年齢と退職時年齢の差に相当する年数1年につき、2%の割合で退職時俸給月額が割増された(定年前早期退職特例措置)。
当時はいわゆる「天下り」が行われていたが、これが批判の的になったことはよく知られているとおり。このため平成19年に国家公務員法等が改正されて、再就職に関する規制などが導入されることになった(平成20年12月31日施行)。
こうして再就職のあっせんが禁止されると、これまで「天下り」で組織の外に出ていた比較的高齢の公務員が自組織内にとどまることになり、在職期間の長期化が懸念されることになる。ポストをどう組みなおすか、キャリア形成をどう図っていくかなど、様々な問題が予想されていたはず。
これを受け、「組織活力を維持する観点から」、また、「職員自身の主体的なキャリアプランに基づく早期退職を支援する措置を適切に講ずる」ため、早期退職に対するインセンティブを高めるための給付の措置などを用意することが求められることに。
上記を背景に「早期退職募集制度」が創設され、平成25年11月よりこの制度に基づく退職(これを応募認定退職という。)が可能になった。
早期退職に対するインセンティブ
ここを気にされる方は多いと思う。
本制度により、勤続20年以上かつ定年前6月超20年以内である職員の退職手当を計算する際に、退職時の俸給月額が定年前1年につき3%割増しされる。ただし、定年前1年以内の人は割増率が2%に下がる。
割増しされた退職時の俸給月額が、実際にどのように効いてくるかをみてみる。
退職手当の額は、「退職時の俸給月額×支給率×調整率+調整額」で計算される。
支給率:勤続年数や退職理由によって変動 / 調整率:官民均衡を図るために法律上設けられたもので退職理由や勤続年数にかかわらずすべての退職者に適用 / 調整額:職責に応じて加算
例えば50歳で応募認定退職(早期退職)する場合、退職手当額の計算の基礎となる「退職時の俸給月額」が30%割り増しになる。
30%=[60(歳)-50(歳)]×3%
よって、上記退職手当の額の計算式に当てはめると、50歳で早期退職する場合は、同年齢で自己都合退職する場合と比べて調整額を引いた額が3割増しとなる。
なお、割増率の計算時に用いる「定年年齢」は、現在の国家公務員の定年である65歳ではなく、旧定年年齢である60歳であることに注意したい。
退職手当の支給状況
通常の定年と早期退職で具体的にどれだけ差が生じるものなのか。内閣官房のサイトに参考になる資料があった。(表はスクロールできます。)
勤続年数 | 計 | 定年 | 応募認定 | 自己都合 | その他 | |||||
受給者数 | 平均支給額 | 受給者数 | 平均支給額 | 受給者数 | 平均支給額 | 受給者数 | 平均支給額 | 受給者数 | 平均支給額 | |
計 | 8,276 | 13,910 | 4,086 | 21,114 | 857 | 22,500 | 1,944 | 3,275 | 1,389 | 2,300 |
5年未満 | 2,019 | 440 | 27 | 848 | 0 | 0 | 851 | 244 | 1,141 | 576 |
5年~9年 | 608 | 1,426 | 44 | 4,518 | 1 | X | 455 | 800 | 108 | 2,766 |
10年~14年 | 223 | 3,006 | 7 | 6,757 | 2 | X | 200 | 2,765 | 14 | 3,874 |
15年~19年 | 140 | 6,043 | 14 | 10,166 | 7 | 8,980 | 106 | 5,174 | 13 | 7,111 |
20年~24年 | 124 | 10,952 | 9 | 13,524 | 28 | 15,543 | 77 | 8,857 | 10 | 11,911 |
25年~29年 | 174 | 15,810 | 5 | 16,256 | 63 | 19,887 | 82 | 12,723 | 24 | 15,559 |
30年~34年 | 568 | 20,788 | 209 | 20,370 | 236 | 23,343 | 94 | 15,853 | 29 | 19,014 |
35年~39年 | 1,884 | 21,947 | 1,470 | 21,891 | 318 | 23,010 | 59 | 18,300 | 37 | 20,810 |
40年以上 | 2,536 | 21,522 | 2,301 | 21,391 | 202 | 23,188 | 20 | 19,892 | 13 | 21,415 |
注)支給額は平均で、単位は「千円」。Xは当該数字を秘匿したことを表す。
資料出所:内閣官房「退職手当の支給状況」(https://www.cas.go.jp/jp/gaiyou/jimu/jinjikyoku/jinji_c5.html)
応募認定による上乗せが勤続20年以上から行われている(青字)。同じ勤続年数での定年退職(赤字)と比べて、それなりに加算されていることがわかる。
辞める前に自身の退職手当額を計算する方法
上記の式に基づいて出すことも可能だが、正確に出そうとするとかなり手間を要するしそれが正しいかもわからない。
ありがたいことに、CASIOの「keisanサービス」サイトに国家公務員の退職手当を計算してくれるサービスがある。
https://keisan.casio.jp/exec/system/1543811420
自分の退職手当もおおむねその額だったので、気になる方はお試しされることをお勧めしたい。
早期退職を申し込むか検討される際には、こちらで自身の手当額を把握してからがよいかと思います。