営業手紙用の筆記具(元公務員の不慣れな営業活動で得た気づき)(その2)

士業としての活動を始めるにあたり、営業用の手紙を手書きで書いてみようと思い立ちました。このことは前回の投稿で詳しくお話したとおりです。
当初は、手軽に使えるボールペンで始めたのですが、使い続けるうちにいくつかの不都合に気づきました。

まず、知らず知らずのうちに力が入りすぎてしまい、長時間書き続けるのが難しくなります。
また、自分の筆記技術では線の太さに変化をつけることができず、全体としての字体もどこか単調で美しく見えません。
さらに、紙に皮脂が付いているとインクの乗りが悪くなり、かすれたり、重ねて書き直すことで不自然な仕上がりになることもありました。

そこで思い出したのが、万年筆の存在です。

万年筆であれば、構造上、筆圧をかけすぎることがなく、楽に書き続けられるのではないか。適度な太さのペン先であれば線の強弱もつけやすく、何よりボールペンよりもフォーマルな印象になるのではないか……そんな期待を抱いたわけです。

高価な万年筆も数多くありますが、私には万年筆そのものに特別なこだわりはありません。
気軽に試してみたいという思いから、リーズナブルな製品を探していたところ、パイロット社の「カクノ ファミリーシリーズ M(中字)」に出会いました。

はじめての「カクノ」

「カクノ」は、子どもや万年筆初心者向けに開発された製品です。
私が選んだのは、軸がグリーンの透明プラスチックになっているモデルで、美しさにも惹かれました。
中字のペン先であれば、多少なりとも線の抑揚をつけやすいのではないかという期待もありました。

インクカートリッジ10本も併せて購入しましたが、本体に1本付属しているため、まずは試してみたいという方にはカクノを購入するだけで十分だと思います。
店によっては1,000円もしないのは大変魅力的な値段設定です。

万年筆を手に取るのは中学生の頃以来でした。
当時、叔父から進学祝いにセーラー製のものをいただいたのですが、筆圧が強すぎてすぐにダメにしてしまった記憶があります。
なので今回の試みには、半ば興味本位の気持ちも含まれていました。価格的にも心理的にも、失敗してもダメージは少ないだろうと。

実際に使ってみて

そんな軽い気持ちで始めた万年筆生活でしたが、結果としては大正解でした。

まず、ペン先の動きをゆっくりすれば太い線に、素早く動かせば細い線になり、線の抑揚を自然に表現できます。これはボールペンではなかなか得られない感覚でした。

また、軸が太めで軽く、手に持ちやすい点も好印象です。特に、グリップ部分が三角形に成形されており、自然と正しい持ち方ができる工夫がされています。

筆圧がほとんど要らないため、書く手に無意識に力が入りがちな私でも、長時間書いていても疲れにくくなりました
さらに、ボールペンと比べると皮脂によってインクがかすれることも格段に少ないと感じます。

万年筆の気づきと注意点

とはいえ、万年筆にも欠点はあります。書いた直後はインクが乾ききっていないため、うっかり触れてしまうと擦れてしまうことがあります。
また、まだ実際に試してはいませんが、持ち運びには向いていないかもしれません。常にペン先を上にしておかないと、インクが漏れる可能性もあるようです。

カクノは軽量でシンプルな設計のため、装飾性はありません。その代わり、文房具好きの方であれば、色違いやペン先のバリエーションを揃えて楽しむこともできるでしょう。

書き味については、他の万年筆との比較ができないので断言は避けますが、少なくとも「長時間の筆記に向いている文具」であることは間違いなさそうです。

書くことへの意識の変化

これまで、手紙を書くという行為にほとんど縁がなかった私ですが、万年筆を使い始めてからは、「文字を書く」という行為そのものへの意識が変わってきたように感じています。

一文字一文字に注意を払うようになり、それ自体がひとつの小さな表現にもなり得る。そんな発見がありました。

気軽なきっかけで始めた万年筆ですが、道具ひとつで世界の見え方が変わる体験は、なかなか面白いものでした。
ともあれ、いま注力すべきは、営業の手紙を書き続けることですね…。

(アイキャッチ画像は、ChatGPTに「安い万年筆が思いのほか使いやすかったのでニヤリとほくそ笑んでいる人を、写真風に表現してください」とお願いして生成させたもの。)

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